このページ内の左メニュー部分へジャンプ| このページ内の本文部分へジャンプ|





ここから本文部分です

インド共和国立視覚障害者施設見学報告
(国立塩原視力障害センター 寺崎氏)

現在位置:HOME > AMIN情報 >インド共和国立視覚障害者施設見学報告


インドの概要(外務省HPより)


  1. 面積
    328.7万平方キロメートル(インド政府資料:パキスタン、中国との係争地を含む)
  2. 人口
    10億2,702万人(2001年国勢調査)※国勢調査は10年に1度実施)
  3. 首都
    ニューデリー
  4. 民族
    インド・アーリヤ族、ドラビダ族、モンゴロイド族等
  5. 言語
    連邦公用語はヒンディー語、他に憲法で公認されている州の言語が21

外務省HPでのインド情報

インド共和国立視覚障害者施設見学報告


 8月中旬に、インドの視覚障害者施設のひとつ、ウッタランチャル州デラドゥーンにある、国立視覚障害者施設、NATIONAL INSTITUTE FOR THE VISUALLY HANDICAPPED〔注1〕を見学に行ってきました。

目的としては二つあり、ひとつは当国の視覚障害者福祉及び教育の現状を学ばせて頂くことと、もうひとつは、今後の交流や相互協力の可能性を考えるステップとして、日本の視覚障害者のための職業としてのあんまマッサージ指圧、鍼灸を紹介するということです。今回は、日本で理療教育を受けた全盲の視覚障害者によるあんま、及び鍼の施術を先方の方に実際に体験して頂くために、筑波技術大学の東西医学統合医療センター研修生であり、また千葉大学柏の葉鍼灸院に勤務している佐々木奈央先生にご同行頂きました。

こちらの日程の都合上、インドの独立記念日(8月15日、記念式典があるほかは休日)にお邪魔することになってしまいましたが、事前のメール、電話でも見学を快諾して頂き、関係職員を集めたミーティング、及び施設見学の機会を設けて頂きました。施設は、建物、職員数、備品等、非常に充実しているという印象を受けました。数時間に渡り時間を割いて頂き、インドの視覚障害の実情を知ることができると同時に、日本の三療、特にあんまマッサージ指圧に関しては非常に興味を持って頂くことが出来ました。有意義な見学訪問が出来たのではと思っております。
内容をまとめて以下に記します。興味を持って頂けた方、ご質問等おありの方は寺崎までお願いします。

【内容の概要】

  1. 先方の施設での、視覚障害者に対する職業教育の現状の学習。
  2. 日本における視覚障害者に対する職業教育の主軸である、鍼、灸、あん摩マッサージ指圧の説明。
  3. 同行して頂いた、治療院勤務の鍼灸あん摩マッサージ指圧師(全盲、女性)による、あん摩施術、及び鍼施術のデモンストレーション。
  4. 今後の日本とインドの、視覚障害者の職業教育に関する国際協力の可能性に関して。

【内容】

  1. 先方の施設での、視覚障害者に対する職業教育の現状の学習。

    見学先施設は、インドにある障害者施設の中で中心的役割を果たしている主要4施設(視覚障害者のためのデラドゥーン国立施設、肢体不自由者のためのカルカッタ国立施設、聴覚障害者のためのムンバイ国立施設 知的障害者のためのセクンダラバード国立施設)のうちの一つであり、幼稚部から高等部までの盲学校(現在数百名在学)と、それ以降の、あるいは教育を受けていない障害者のための就労支援施設(現在百名弱在学)、及び学生のための寄宿舎からなっている。職業教育としては、当日見学出来たものとしては、中等教育終了後の生徒を対象とした、理学療法士(補助)の養成講座(2年過程。基礎医学を学んだ上で運動法を中心としたリハビリテーションを学んでいる様子であった。卒業と同時に理学療法士補助の資格が与えられ、病院等に就労することが出来るとされている。)、大学ノート製造業(家内制手工業のような形で、わら半紙の束と厚紙に、各種器械を使用して罫線付け、裁断、プレス、穴あけ、縫製等の加工を行い、大学ノートを製作する。)があり、いずれも教育器具や器械に視覚障害者でも学習及び作業が可能になるような工夫が見られた。この他、コンピューター、軽工業の分野でそれぞれいくつかの職業訓練があるとのことであった(当日は見学できなかった。)が、各業種に共通する問題として、それらが視覚障害者のために特に保護された職業ではないことから、就職時、あるいは就職後の同業晴眼者との競争において相当なハンディがあり、結局職業として維持するのが非常に難しいということである。結果、施設において職業教育はしても就職先を提供出来ないことから、当施設で教育を受けるメリットに関して説得力に欠け、教育を希望する視覚障害者が非常に集まりにくい現状があり、インドの大部分の障害者は未だ教育を受けることなく、主に乞食により生計を立てているとのことである。数年前より、視覚障害者のための職業としてマッサージを導入しようという動きがあり、デリーにある関連施設の一つでタイ式マッサージを試験的に導入し始めている。
  2. 日本における視覚障害者に対する職業教育の主軸である、鍼、灸、あん摩マッサージ指圧の説明。

    日本のあん摩マッサージ指圧、鍼、灸(三療)に関して、理論、方法、適応症等を簡単に説明し、器具のサンプル(あん摩用日本手拭一枚、セイリン社製ディスポーサブル鍼一寸0番、寸3の1番、2寸の5番を各5本ずつ、点灸用艾、灸点火用線香)を渡す。三療が日本において、江戸時代から続く視覚障害者の職業であり、現在も日本の視覚障害者施設の職業教育はこれらを主軸としていることを説明した。
  3. 同行して頂いた、治療院勤務の鍼灸あん摩マッサージ指圧師(全盲、女性)による、あん摩施術、及び鍼施術のデモンストレーション。

    同行して頂いた佐々木先生に、先方の施設長Ms. Anuradha Mohit〔注2〕さんに対して、左右頸肩部から上肢までのあん摩施術を、ミーティング出席者の中で右肘に痛みがあった職員の方に対して(診察の上、上腕骨外側上顆炎慢性期と判断。)局所、筋への鍼施術、及び手関節へのあんま施術をして頂いた。両被術者に対する施術共に直後効果があり、被術者からの良好な反応を得た。
  4. 今後の日本とインドの、視覚障害者の職業教育に関する国際協力の可能性に関して。

    先方には視覚障害者の職業教育として三療を導入することに関して非常に興味を持って頂けた様子であり、インドの視覚障害者が日本の三療を学ぶために何が出来るかという質問を頂いたため、現在日本での活動内容を事前に確認した2団体(AMIN、IAVA〔注3〕)に関して説明し、AMINのパンフレットを渡す。今回は個人的な訪問、見学であるため何も約束できないことを説明した上で、今後の交流についてはEメールを通じて連絡しあうことを確認した。

【所感】

世界最大数の視覚障害者を抱えるこの国において、障害者に対する職業教育の弱さは大きな問題である。晴眼であっても職につけない国民が多く、就労競争が厳しい中、障害者の職業的自立、安定した就労のためには保護された職域が必要であるだろう。
施設での福祉体制は充実していると言う印象を受けるし、一般企業における障害者雇用の法制度もあるが、障害者の活躍できる職種が現在十分でないことから、その法律も有名無実化しているということであった。施設長のお話では一般企業におけるヘルスキーパーのような職種についても考えているらしく、着衣のままで、また座位でも臥位でも行える日本のあん摩の潜在的需要は非常に高いように思われる。


【注1】インド共和国.ウッタランチャル州デラドゥーン市ラージプル通り、国立視覚障害者施設(NATIONAL INSTITUTE FOR THE VISUALLY HANDICAPPED), (Ministry of Social Justice & Empowerment, Govt. of India.) 116, Rajpur Road, Dehradun (U.A.) - 248 001 India Phone: +91-0135-2744979,2744387 (PBX) 2744491. Fax: +910135-2748147. E-mail: nivh@sancharnet.in, director@nivh.org )

【注2】Ms Anuradha Mohit (India)
Ms Anuradha Mohit is the Special Rapporteur for disability on the Indian Human Rights Commission. She has visual impairment since the age of 10. Trained in special education and administration, research methodologies and music, she has served as Deputy Chief Commissioner in the office of Chief Commissioner for persons with disabilities, Government of India, Executive Director of the National Association for the Blind, India and Lecturer in Research Methodology in Fine Arts.

Ms Mohit is well known as founder member of the Disabled Rights Group and has worked for the implementation of the Disabilities Act 1995 and related media campaigns. She has held positions in several disability bodies, including Convenor of the Asian and Pacific Network of Women with Disabilities, and Consultant for UNESCO on ICT and people with disabilities. Ms. Mohit has contributed immensely to the cause of people with disabilities, in areas such as inclusive education, women with disabilities, community based rehabilitation, and prevention of disability.

"The Equal Rights Trust" (http://www.equalrightstrust.org/anuradha-mohit/index.htm)より抜粋

【注3】IAVI(社会福祉法人 国際視覚障害者援護協会) International Association for the Visually Impaired

アジア・アフリカから視覚障害を持つ留学生を日本に招聘し、日本での勉学を支援する。自国へ帰国後、習得技能を活かし、同じ障害を持つ仲間のリーダーとなる人材を育成することを目標としている。

URL: http://www11.ocn.ne.jp/~iavi/index.html